円高の影響
円高の影響は悪いことばかりではない?
2007年のサブプライム問題、2008年のリーマンショックと世界的な金融不安が起こり、それをきっかけとして長期に及ぶ円高トレンドが続いています。円高不況だ、円高対策だと巷では騒がれていますが、本当に円高は日本にとって悪い影響を与えているのでしょうか?先入観を持たずに社会を見渡すと、円高の意外な影響が見えてくるかもしれません。以下より円高の影響をまとめてみます。
日本経済への影響
悪い影響
円高の影響として真っ先に挙がるのが「輸出企業への悪影響」です。円高という事は円の価値が高くなるわけですから、海外からしてみれば「日本の商品が値上がりする」という事を意味します。その結果、日本のモノが売れにくくなり、輸出額が減少します。売り上げの減った輸出企業はコスト削減を迫られ、そこで働く従業員の給料削減へとつながります。さらに、物価の下落圧力となることから、デフレへの影響も心配されています。
良い影響
一方円高による良い影響は何でしょうか?それは先ほどとは逆に、海外からの輸入代金が安くすむことです。このため、外国からの資源や資材などを輸入して加工している様な製造業にとっては原価を低く抑えることができ、収益アップへと繋がります。また、アメリカや中国などアジア諸国へ進出する際にも、現地の土地を安く買えたり、企業買収がしやすくなるなどのメリットもあります。
個人投資家への影響
為替介入で取引高急増
次に取り上げるのはFXなど外貨商品に投資する個人投資家への影響です。FX市場では2011年8月1日から証拠金倍率(レバレッジ)の上限を50倍から25倍に引き下げる規制強化を行い、取引量の減少が懸念されていました。しかし、フタを開けてみれば結果は正反対だったのです。歴史的な円高水準を記録する状況に歯止めをかけるため、2011年8月4日に政府・日銀は為替介入に踏み切りましたが、その日の取引量は通常の4倍程度にまで膨らんだという情報もあります。急激な円高が起こるたびにそれがニュースで取り上げられ、FX人口を増やす、そしてまた円高を引き起こすというサイクルができつつあるのです。
円キャリー取引とは違うブーム?
日本ではバブル崩壊以降のゼロ金利政策により、長年に渡って低金利の状態が続いており、2004年〜2007年ごろの円安局面では円を売って高金利通貨を買う円キャリー取引がブームとなりました。しかし、現状のFX人気は世界的な低金利下にあって別の要因が働いていると言えそうです。外貨預金や外貨MMFへの投資額の増加から見ても、それは正しく円高の影響と呼べるものです。もっとも、再三の市場介入やアメリカ経済の回復もあって円高相場にも変化が起こっており、今後諸外国の金利が上昇するようなことになれば、結果的には円キャリー取引にとって絶好の仕込時であったと言われるのかもしれません。
観光・旅行への影響
日本の旅行客への影響
円高の重要な影響として、旅行やツアーも忘れてはなりません。昨今の韓流ブームや円高ウォン安の影響もあってか、韓国旅行へ行く日本人が増えていると言います。韓国観光公社の資料によると、韓国への日本人旅行客の数は2011年9月には前年同期に比べて24%増しの33万人にまで上るそうです。その他、ハワイやグアムはもちろんのこと、、タイ・ベトナム・カンボジアなどのアジア圏への旅行も活況だとか。
海外からの旅行客への影響
一方、海外から日本に訪れる観光客にとってはマイナスの影響となっている様です。円高の影響だけでなく、2011年3月11日に起こった東日本大震災および原発事故の影響もあってか、地震以降の訪日外国人は激減しています。日本政府観光局(JNTO)のデータによると、2011年4月〜9月の訪日外国人旅行者数は273万人と前年同期比で40%も減少したそうです。これは過去50年間でも最悪の水準であり日本の観光業やホテルなどにとっては大きな痛手となっています。