リスクとは
リスク(risk)の定義・意味
リスクとは、一般には投資やビジネスにおいて損失を被る危険性(可能性)と解釈されている。厳密には、”危険性”という意味で用いられる分野と、結果が予測しにくいという”不確実性”の意味で使われる分野がある。
不確実性という意味でのリスク
不確実性という意味でのリスクは経済学、特にFXやデリバティブなど金融分野で用いられることが多い。しかし、明確に区別するために、損失を被る可能性を”ダウンサイドリスク”、利益を得る可能性を”アップサイドリスク”と使い分ける場合もある。
為替変動リスク
為替変動リスクとは、外国為替市場において為替レートの変動に伴うリスクのことである。貿易収支黒字国である日本では、為替相場の過度の変動による円高を受けてしばしば経済的リスクにさらされてきた。そのため、財務省や日銀の判断により円安に誘導すべく、為替介入が行われることもある。
金利リスク
金利リスクとは、金利の変動による被るリスクのこと。債権市場においては、金利が上昇すれば債権価格は下落、下落すれば上昇する。また、FXにおけるスワップポイントも取引通貨間の金利差を受け取るものであり、金利リスクの代表例である。一般的に、好景気・インフレ・円安下において金利は上昇し、不況・デフレ・円高下においては下落する。
レバレッジリスク
レバレッジとは他者の資本を利用することにより自己資本よりも大きな取引ができるようにした仕組みのこと。これにより、FXやCFDでは価格変動リスクを増大させることができ、利益・損失ともにレバレッジ効果の分だけ大きくなる。担保を用いた不動産投資や株の信用取引もレバレッジリスクを取っていると解釈できる。ヘッジファンドなどはこのレバレッジを生かすことでハイリスク・ハイリターンの運用をする。
危険性という意味でのリスク
単にリスクという場合には危険性を表す方が一般的である。この場合のリスクは投資や経営、健康・環境・安全など様々な方面で使われる。また、それぞれのリスクは他のリスクとも相互に関連しており、顧客情報の漏洩などはシステムリスクに始まり信用リスク・社会リスクへと広がる恐れがある。
災害リスク
地震・津波・台風・落雷・豪雪などいわゆる天災によってもたらされるリスクである。この種のリスクは性質上回避することが不可能かつ被害も甚大なため、極めて慎重かつ十分な対策が求められる。実際にはビルの耐震構造や防波堤、避雷針などの方法で対策されている。
社会リスク
テロ・脅迫など企業の経営上重大なリスクをもたらすものから、風評被害・不買運動・法制度の変化・スキャンダルなど様々なリスクが想定される。ただし、災害リスクとは違い事前に十分な対応をすることである程度回避できるものと思われる。
事故リスク
火事・停電・交通事故・盗難など、ほとんどの業種が被る可能性のあるリスクである。ただし、これらも、従業員の健康管理や教育、その他防災訓練などによってある程度未然に防ぐことが可能である。
システムリスク
20世紀後半のIT革命以後、急速に危険性が認知され始めたリスクである。2000年問題に代表されるようなプログラムのバグ(欠陥)に潜むものや、コンピュータウイルスへの感染、ハッキングが主な攻撃手段として用いられる。2012年2月2日、東京証券取引所で起こったシステムダウンや、2014年に起こったビットコイン最大の取引所”マウントゴックス”がサイバー攻撃により時価470億円相当のビットコインを盗まれた事件など、近年そのリスクは無視できないほどに大きなものとなっている。u-Japan構想に代表されるICT政策においても「情報セキュリティの拡充」が重要な課題となっている。
環境リスク
大気汚染・土壌汚染・温暖化・水質汚濁に代表されるように、化学物質などの流出により環境破壊を引き起こす危険性を環境リスクという。その他にも、2005年に社会問題化したアスベスト被害や、近年では2011年3月11日の福島原発事故による放射能の飛散・食品のセシウム汚染なども挙げられる。
人事リスク
人事リスクとは、社内の従業員間で起こるトラブル、または従業員自身が引き起こす諸問題のこと。昨今増加傾向にあるセクハラ(セクシャルハラスメント)・パワハラ(パワーハラスメント)・過労死・自殺に加えて差別問題・ストライキも含む。
法務リスク
法務リスクとは、各種法令の遵守を怠ることにより被るリスクのこと。脱税・申告漏れ・所得隠し、賃金の不払い、食品の産地偽装、建築物の耐震偽装など近年コンプライアンスという用語と共に重要性が認知されだしたリスクである。訴訟リスクのみならずその後の企業イメージの低下、ひいては業界全体の信用失墜に及ぶ可能性まであり、SNS・ツイッター・フェイスブックの普及により年々リスクが顕在化してきているのが現状である。
信用リスク
信用リスクとは、主に金融機関などが貸付を回収できなくなるリスクのことであり、2007年に起こったサブプライムローン問題とそれを端に発したリーマンショックなどがその最たる例である。その他、1)銀行が個人に貸し付けたローンの焦げ付き、2)株式市場においての企業の倒産リスク、3)預金を引き出せなくなるリスク、4)FXなど国家が破綻した場合に被るデフォルトリスクなどその規模は大小様々である。
カントリーリスク
カントリーリスクとは、海外に展開している企業がその国の政治情勢や社会環境の混乱、自然災害などによって被るリスクのこと。特に、内戦・紛争の多い地域であるアフリカや中南米はカントリーリスクが高いとされるが、近年では中国産食品の安全性が問題視されチャイナリスクという言葉まで生まれている。
リスクの評価・改善
主に安全工学などの分野において、人体や環境に与える悪影響を評価し、その後の改善策などの有無を判断することを”リスクアセスメント”と呼ぶ。具体的には、医療や工業・航空・鉄道などの分野において、各種機器・装置の安全性を評価・改善することを言う。